米大統領選後、テイラー・スウィフトのファンである「スウィフティーズ」がXからBlueskyへと移行を始めている。
Xのオーナーである実業家イーロン・マスクは、トランプの最有力支援者の一人として、トランプ支持のアメリカPAC(政治活動委員会)に大金を投じ、選挙遊説で候補者を応援し、X上でトランプのメッセージを拡散してきた。さらにマスクは、トランプの右派男性層への浸透を後押しした。旧Twitter上で強固なコミュニティを形成していたスウィフティーズはこれを看過せず、7日までに──トランプの勝利からわずか48時間も経たないうちに──Xからの撤退を開始したのだ。
「新しいコミュニティを築けることが素晴らしいですし、イーロンを一切支持しなくて済むのが何より嬉しいです」と、Bluesky上で@justin-the-baron.swifties.socialとして活動するジャスティン(嫌がらせを懸念し、ファーストネームのみの公開を希望)は語る。「イーロンは明らかなトランプ支持者で、それはテイラーの価値観も、私たちスウィフティーズの価値観とも相容れません」
スウィフティーズには様々な政治的立場の人々がいるものの、このコミュニティは前向きで包摂的な場であることを誇りとしている。カマラ・ハリスが民主党の大統領候補に指名された際、スウィフティーズは彼女への支持を表明するため「Swifties for Kamala」を結成した。9月には、スウィフト本人もハリスへの支持を表明。その際、Instagramへの投稿で、トランプ陣営が彼女の支持を装うために使用した生成AI画像について言及していた。
この支持表明に対し、マスクは「よし、テイラー......君の勝ちだ...僕は君に子どもを授け、命を懸けて君の猫たちを守ろう」と投稿。少子化への懸念を繰り返し表明してきたマスクには、少なくとも3人の女性との間に11人以上の子供がいる。『The New York Times』によると、独立系候補ロバート・F・ケネディ・ジュニアの元副大統領候補だったニコール・シャナハンにも、精子提供を申し出たという(シャナハンは辞退した)。
差別的フレーズの使用が急増
Swifties for Kamalaの組織者であるアイリーン・キムは、選挙後、Xで女性蔑視的な言動が多く噴出したと語る。これにより、彼女を含む多くのスウィフトファンがXを離れ、Blueskyに活動の場を移したという。Xではマスクの経営権取得後、プラットフォーム上でヘイトスピーチや偽情報が増加したことは研究で判明していたが、トランプの当選でそれが一層加速したとみられる。戦略対話研究所の報告によると、トランプの勝利から24時間以内に、白人至上主義者ニック・フエンテスの選挙夜の発言を模倣した「Your body, my choice(あなたの身体はわたしのもの)」といったフレーズの使用が、X上で4,600%増加したという。
「私たちはそういった言説から距離を置きたいのです」とキムは語る。また、Xの「ブロック」機能の最近の更新により、ブロックされたユーザーが、ブロックした側のプロフィールや投稿を閲覧できるようになったことも、プラットフォーム上での経験を一層悪化させていると指摘する。「Twitterは完全に地獄と化してしまいました」とキムは話した。
ジャスティンは1年以上前からBlueskyに登録していたものの、今週まではXを主に利用していたという。「選挙後、タイムラインはトランプ支持者からDMで性的暴行の脅迫を受けたスウィフティーズの報告で溢れかえり、トランプ勝利を祝う性的に暴力的なコメントが飛び交っていました」と彼は説明する。
一方、Bluesky上では、ジャスティンもキムも明確な違いを感じており、コミュニティからより強い安心感とサポートを得られていると口を揃える。「スウィフティーズがここにいる。私は、この新しい指導者たちを歓迎する」とあるユーザーは投稿している。
「Blueskyは本当に、再びソーシャルメディアらしさを取り戻した感じです。純粋にコミュニティとつながったり、興味深い投稿を見たりできる。誰もあなたと争おうとしている感じがしません」とキムは語る。この48時間、彼女は時折Xに戻っては、他のユーザーにBlueskyへの移行を呼びかけている。「この流れが続くのか、みんなが実際に移行して定着するのかはわかりません」と前置きしつつ、「でも今は、本当に新鮮な空気を吸っているような感覚です」と付け加えた。
Bluesky上には数多くのスウィフト関連のスターターパック(新規ユーザー向けおすすめアカウント集)が存在するが、大半が過去24時間ほどの間に作成されたものだ。
「いつか、もう二度とXを開く必要がなくなる日が来て、スウィフティーズが皆ここにいてくれたら、それは大きな勝利です」とジャスティンは締めくくった。
(Originally published on wired.com, translated by Mamiko Nakano)
※『WIRED』による大統領選の関連記事はこちら。
雑誌『WIRED』日本版 VOL.54
「The Regenerative City」
今後、都市への人口集中はますます進み、2050年には、世界人口の約70%が都市で暮らしていると予想されている。「都市の未来」を考えることは、つまり「わたしたちの暮らしの未来」を考えることと同義なのだ。だからこそ、都市が直面する課題──気候変動に伴う災害の激甚化や文化の喪失、貧困や格差──に「いまこそ」向き合う必要がある。そして、課題に立ち向かうために重要なのが、自然本来の生成力を生かして都市を再生する「リジェネラティブ」 の視点だと『WIRED』日本版は考える。「100年に一度」とも称される大規模再開発が進む東京で、次代の「リジェネラティブ・シティ」の姿を描き出す、総力特集! 詳細はこちら。